アルティメットを始める君へ(2)

アルティメットを始める君へ(2)

 

競技自体は、サッカーをやっていたのでそんなに難しくなかった。タイミングを見計らって走り、パスを貰えば良いのだ。パスを貰えそうな場所は何となく判った。先輩に注意された場所は駄目、褒められたりパスが貰えた場所が良いというように理解した。

 

投げることも小学生の時に流行っていて地元でたくさん遊んでいたので投げられたが、違う投げ方があって、それは全くできなかった。パンチパーマで眼鏡の人が上手に投げていたのが印象的だった。彼が同級生であることを知り、ぼくはショックを受けた。上手に投げられることももちろんだが、その風貌にだった。

 

何度か練習に行き、友だちもでき、フライングディスクとの青春を謳歌している頃、ある先輩がぼくに向かって言った。

 

『こいつ、とかちゃん(渡嘉敷勝男さん、元プロボクサー)に似ているから”とかちゃん”だ』

 

中学時代に先輩に天龍源一郎、高校時代に同級生からバカボンと呼ばれ、ニックネームには閉口していたぼくは、これ以来全く練習に行かなくなった。夏休みには地元で車の免許を取り、高校3年生とは違ったのんびりした気持ちで夏を迎えていた。することがないのだ。ひまな夏休みが終わり、大学が始まるとクラスメイトと大学生活を楽しんでいた。カラオケに行ったり、ボウリングをしたり、誰かの部屋で勉強会と称した集まりをしたり、誰かを好きになったりしていた。通学が自転車だったこともあって、東京も散策した。神楽坂、神保町、水道橋。一度は大手町を抜けて散策していたら、学校へ行くのに皇居を横切らないと行けなくなり、お陰で実験の授業には1時間遅刻で出席したこともあった。

 

たまに電車で学校から帰ると、アルティメットサークルの先輩のSさんとホームで一緒になった。Sさんはいつも同じことを言っていた。

 

『とか、練習に来いよ。』

 

『とか』というニックネームが人生を変えるとは思いもつかなかったぼくの足は、またもや遠くなっていった。

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