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令和元年8月号序文

 7月20日(土)19時56分。入院中でもコカコーラを美味しそうに飲んでいた祖母ヨシが永眠しました。大正11年9月24日生まれでしたので9月で97歳。享年98歳になるのでしょうか。最後まで元気な祖母でした。

 

 祖母の思い出はたくさんあります。小学生の頃、学校から帰ってくるとニラの出荷箱を作るように言われたこと、草むしりを一日中している後ろ姿、りんごの摘果をするモンペ姿。和裁も得意で半纏を作ってくれたり、孫たちの浴衣を作ってくれたり。長女が生まれた時には一日中抱っこしていてくれていました。

 

 彼女を一言で言い表すならば、『忍耐』になるでしょう。『我慢強い』かもしれません。18歳で渡部家に嫁ぎますが、結婚直後、旦那である竹一郎(以後祖父)は戦地に赴き、6年もの間じっと、そしてずっと祖父の帰りを待ち続けました。慣れない農家の仕事、家事、小姑。たくさんの困難を乗り越えて来た彼女を支えたものは何だったのでしょうか?今では知る由もありませんが、彼女が「フーッ」と一息ついたのを見たことがありません。黙々と、そして淡々と何かをしていました。 

 

 最後に自宅へ戻って来てからも、じっと、そしてずっと眠り続けていました。時折、食事の知らせで目を覚ましますが、それ以外は目を閉じていました。苦しいこともあったのでしょうが、『我慢強く』していました。彼女のおかげで気づいたことがあります。それは、彼女の血が私にも、私の子どもたちにも流れていることです。彼女の『忍耐』『我慢強さ』が私たちの体にも存在しているのです。それはとてつもなく心強い。これから待ち受けるであろう様々な困難にも『我慢強く』立ち向かえる素質があるのです。大正、昭和、平成、令和と4つの時代を、『我慢強く』生き抜いて来た彼女の魂が私たちにもあるのです。

 

 今年も天候不順ですが、彼女のおかげで乗り越えられそうです。『人生、生きてりゃ、なんとかなる。』映画「もののけ姫」でそう力強く言っていたおトキさんが、若い頃の祖母と重なります。(とか)